センター長 橋本浩一からの挨拶を更新いたしました。(23.5.1)

センター長 橋本浩一 ご挨拶

                        「参加者、関係者と一緒に歩み続けます」

 東日本大震災発生から2年が経過し、希望や不安の入り混じる思いの中で妊娠し、出産、そして育児をされていると存じます。
 エコチル調査(「子どもの健康と環境に関する全国調査」)は環境省が企画立案した現在進行中の出生コホート研究です。 身の回りの化学物質の子どもの成長への影響を、母親の胎内にいるときから児が13歳になるまでご協力いただき、安心安全な子育て環境を作ることを目的としています。 現在、日本全国15か所の調査対象地域で、10万人の妊婦さんの参加を目標に参加登録をお願いしています。 福島ユニットでは平成23年1月31日より、調査対象地域の福島市周辺、南相馬市、双葉郡の協力医療機関において参加者の登録が開始されました。
 
 しかし、残念ながら開始間もない3月11日に東日本大震災、その後の東京電力第一原子力発電所事故に見舞われました。 調査対象地域が限定されている本調査へ、震災直後より調査対象地域外の妊婦さん、医療機関から全県下での実施を望む声がありました。 多くは放射線に対する不安の声でした。 化学物質に特化したエコチル調査では当時の声に十分にお応えすることに困難さを感じていましたが、「家族の半年ごとの質問票調査による子どもの見守りは、今までの子育て環境にはない綿密な見守り環境となります。 万が一にも何らかの兆候が見られた時は早期に医療機関に相談することが可能となり、将来を通して不安に応えることができます。」と説明してきました。 一方、不安解消の観点から、「放射線の健康影響を評価するためのデータをできる限り収集し、これまで予期されなかった影響が万一にも生じることがないか、見守っていくことが重要である。」という考えにより、全国15ユニットに係る調査全体の研究計画書が改定され、平成24年10月1日からエコチル調査で解析する環境要因に放射線が加わり、調査対象地域を福島県下全59市町村に拡大されました。 準備不十分なまま開始され、多くの関係者に多大なる負担をお掛けしながらも、参加者のご理解に支えられ予想以上のスピードで参加者登録が進められ、平成25年3月末日で、県内ほぼ全ての市町村の妊婦さん約6000名に登録いただき、茨城県大子町の医療機関を含む51の産婦人科医療機関に御協力を頂いています。 さらに、母親の参加同意率は約80%であり、3000名近い赤ちゃんも誕生しています。

 震災後、「寄り添う」、「見守る」という言葉をよく耳にしますが、言うのは簡単ですが、如何に実現するかが課題です。エコチル調査も例外ではありません。 「草の根から」の考えに基づき各医療機関で参加者様への丁寧な説明に心がけ、調査の他に参加者・医療機関を対象にした放射線に関する講演会、コンサート、公民館での茶話会、タウン誌への寄稿、絵本読み聞かせラジオ番組提供、ニュースレター発行などを手掛けてきました。 また、ユニットセンター内の小児科医や助産師が参加者からの問い合わせにお応えしています。 参加者の皆様からの御意見等をうかがい、ご協力いただきながら、出生した子供が13才のゴールを迎えるまで、一緒に本調査を作り上げていければと考えています。さらに本調査では、子どもが13歳になるまで家族と一緒に見守って行きますが、その子どもが大人になり、自分の子どもをもうけるときに結果が役立ちます。 お父さん、お母さんにとっては、未来の子ども、特にご自分のお子さん、お孫さんのための調査と御理解いただければと存じます。
 
 本調査への参加登録期間が残すところあと約1年となりました。 しかし、エコチル調査は歩み始めたばかりです。 そして、遅まきながらも歩み始めた福島県の復興とともに歩み、エコチル調査福島ユニットセンターは微力ながら「福島で産み育てる」ことをお手伝いすることが最大の課題ととらえ取り組んでいます。 今後も参加者、関係者と立ち止まることなく一緒に歩み、成長し続けたいと存じます。 今後とも宜しくお願い致します。

                                                           平成25年5月1日
                                                        センター長 橋本浩一

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